作業療法士の仕事で大切にしたいこと

専門知識だけでは良い作業療法士にはなれない

作業療法士には人の体の機能など医学的な知識やリハビリテーションに関する専門知識が不可欠ですが、このような専門知識以外にも大切なことがあります。

作業療法士は思うように体を動かせない人や社会に馴染めない人など、苦しんでいる人と接するのが仕事です。
作業療法士として行動はすべて、「患者様のために」が基本となります。

しかし、作業療法がかかわる分野は多岐にわたりますし、患者さんの症状や精神状態は千差万別です。
また、医療技術もフルスピードで進化しており、新たなリハビリテーション技術やアプローチ方法なども開発されています。
このため、患者さんに対してどのようにアプローチすればいいのか、悩んでしまうこともあります。
ですから、自分の中に一つの軸となるものを持ち、それを基準にアプローチ方法を選んでいくことが大切です。

だからといって、他の人が自分の考えと違っても、反発せずに受け入れることも重要です。
作業療法士の数だけ、それぞれのリハビリテーション観があるといっても過言ではなく、これは専門職の世界ではよくあることです。

作業療法士であっても、それぞれがベストだと思う考え方をもとに、さまざまな角度から患者さんにアプローチするのは、決して悪いことではありません。
専門職として長く働いていると、自分のやり方、自分の考え方がベストだと思い込んでしまいがちですが、頭を柔らかくして、他の人の意見にしっかりと耳を傾ける柔軟な態度が必要ではないでしょうか。

患者さんの思いやる気持ちが最も重要

患者さんの気持ちに寄り添う姿勢も大切です。
患者さんは一人ひとり考え方も個性も、これまでの暮らし方も異なります。
リハビリテーションに対する態度でも、前向きに頑張る人もいれば、訓練を嫌がる人もいます。

しかし、どのような患者さんに対しても忘れてはいけないのが、小さな変化を見逃さないよう、しっかりと対応することです。

いつもは消極的なのにリハビリにやる気を魅せたとき……、いつも頑張っている人が元気が無いとき……など、ちょっとした変化を見逃さず、そのときに適切なアプローチをすることが非常に大切です。
やる気をみせた患者さんには、さらにやる気を伸ばす言葉や、励ましの言葉を投げかける。
元気がない患者さんには、比較かんたんな訓練を行う、世間話をしながら精神状態などを観察してみるなど、ほんの少し対応を変えるだけで、患者さんによい効果が出ることが少なくありません。
そのためには、真剣に患者さんと向き合い、患者さんのために何ができるかを常に考え続ける必要があります。

作業療法士の仕事は、今日取り組んで明日に結果が出るというものではありません。
リハビリテーションの訓練は長く続きますから、患者さんにも作業療法士にも根気が必要です。
そして、患者さんのつらい気持ちや悲しい気持ちに共鳴し、そのなかでも楽しいことを見つけていっしょに体験する……、患者さんの生きようと思う気持ちを支える、患者さんの味方であり続けたいものです。

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